高齢者の皮膚は水分や皮脂が減少し、皮膚を保護するバリア機能が低下しています。そのため、乾燥や痒み、かぶれ等の皮膚トラブルが起きやすく、なかなか治らなかったり、重症化しやすい傾向があります。 ここでは、皮膚の乾燥がなぜ起こるのか、痒みなどのトラブルへの対処方法、また日頃からできる予防的なスキンケアについてもご紹介します。
高齢者のスキンケア
お年寄りの肌の特徴
年齢を重ねると、皮膚が乾燥してひび割れが起こったり、粉がふいたりといったお肌のトラブルが多くなりがちです。「高齢者だから仕方ない」と思うかもしれませんが、なぜこのような肌トラブルが起こってしまうのでしょうか?
お年寄りの皮膚の特徴は、皮脂の分泌が減り乾燥してくることや薄くなることなどが挙げられます。その結果「小じわ」や「粉がふく状態」 になります。
また、皮脂の分泌やアミノ酸の合成量が低下することによって、水分を保持できなくなり、皮膚が乾燥して、細菌やアレルゲンなどの侵入をブロックする「バリア機能」が低下して外界からの刺激に弱くなります。
そのため、普通では問題とならないような軽い刺激にも反応して痒みが起きやすくなります。つまり、衣類との摩擦や温度の上昇など、ちょっとした刺激で痒みを覚えてしまうのです。かゆみが起こると、どうしても掻いてしまいますが、そうすると、皮膚に湿疹が生じ、皮膚のバリア機能がさらに悪化してしまいますので、できるだけ搔かないように注意する必要があります。
肌トラブルの予防
石鹸やシャンプーを選ぶ際は洗浄力の強いものを避け、使用量も必要最低限にする必要があります。
それ以上に注意する必要があるのは、擦る(こする)ことです。
あかや皮膚表面のカサカサを落とすという目的からなのか、また長年の習慣からなのか、ゴシゴシと体を洗う方が多いようです。
それにより皮脂が失われ、皮膚表面の角質層もそぎ落とされてしまいます。
つまり、擦れば擦るほど皮膚の乾燥が誘発されてしまうのです。
入浴時にはタオルを使用せず、石鹸を手で泡立てて優しく洗うのが一番といえます。
入浴後に保湿剤を塗るのも役立ちます。
市販されている保湿剤にはかゆみを止めるために入れてある成分が刺激になることがあり、注意が必要です。
保湿を目的にした入浴剤の使用も有効です。
高齢者におすすめのスキンケア
スキンケアとして基本的なことは、皮膚の損傷を起こさないように普段から予防的にケアを行うことが重要です。高齢者の場合は、症状が悪くなってからでは対応が遅いことがほとんどです。場合によっては状態がどんどん悪くなり、治療が困難になる例も多くあります。普段からスキンケアに対して意識を高め、肌の状態を維持してトラブルが起こらないように対策しておくことが大切です。
入浴時
皮膚の損傷を作らないためには、こすらないことが重要です。ナイロンタオルなどはもちろんですが、普通のタオルやスポンジでもこすらないようにしましょう。ボディソープや石鹸などでしっかりと泡立てて、包み込むようにするだけでも十分です。
また、湯船に入る際は、温度が高すぎると皮膚の防御作用の一つを担う皮脂が過剰に取れてしまいます。できれば、39℃くらいの少しぬるめのお湯にゆっくりと浸かるのが望ましいでしょう。入浴剤を使用し、うるおいを与えるような成分を混ぜ込むのも有効です。
入浴後
入浴後は、水分保持機能が弱くなっている高齢者の肌でも十分水分を含有しています。これらが蒸発する前に速やかに保湿剤を塗布し、少しでも含有している水分を逃さないようにするケアが大切です。
セラミドやワセリンなどを使用し、素早く全身に薄く伸ばすだけで十分です。この時にこすらないように気をつけましょう。両方とも用意ができるようならば、セラミドを塗布してからワセリンを塗るとなお効果的です。
皮膚の保護
脆弱な皮膚を守るには、清潔を保持する、刺激物を除去する、乾燥を予防する、紫外線から防御する、圧迫・摩擦・ずれから保護する、尿・便失禁による汚染から防御する、感染を予防する、保温保湿に努めることが大切です。皮膚を健やかに維持することができるように、予防的なスキンケアの実践が重要です。
また日頃から包帯やアームカバー、レッグウォーマーなどを活用して、皮膚を保護するケアも必要です。爪の手入れは定期的に行い、掻痒感による掻破の可能性がある場合は、手袋などを使用して皮膚の損傷を予防します。
高齢者におすすめの下着や肌着
高齢者のデリケートなお肌は乾燥や汗、摩擦などの刺激に弱いため、着用する下着や肌着によっては皮膚トラブルが起きる原因になることも多いのです。できるだけ肌にやさしい下着や肌着を選ぶためにも、これからご紹介する情報を参考にして頂ければと思います。
1)天然素材にこだわる
敏感肌の方にとって、素材は非常に重要です。天然素材の肌着を選ぶことで、肌への刺激を最小限に抑えることができます。特に綿やシルク、メリノウールは天然繊維かつ肌触りが良く、通気性が高いためおすすめです。また、化学繊維は避けるようにしましょう。肌着の素材はタグで確認できます。
2)無添加・無漂白の生地を選ぶ
化学物質や染料が原因でアトピー性皮膚炎が悪化することがあります。無添加・無漂白の肌着を選ぶことで、余計な刺激を避けることができます。漂泊の有無に関しては、タグに表記がありませんので、購入したお店や品質表示タグに記載された販売者に確認するとよいと思います。
3)肌に優しい縫製
縫い目が肌に当たることでかゆみや痛みを感じることがあります。縫い目が表に出ているものや、フラットシーマと言われる縫い目が出ない仕様、シームレスの肌着を選ぶことで、縫い目が肌に触れることがなく快適に過ごせます。
4)やわらかく、伸縮性のある生地を選ぶ
肌に優しいやわらかい繊維を選ぶことで、摩擦による刺激を軽減できます。伸縮性のある素材を選ぶことで、圧迫感を軽減し、ストレスフリーな着心地を実現できます。特に、超長綿といわれるスビン綿やスーピマ綿100%の肌着や伸縮性も備えたメリノウール100%がおすすめです。綿だとしても、粗い生地は繊維摩擦につながり、肌のヒリヒリやかゆみの原因になることもあるので、ご注意ください。
5)適切なサイズを選ぶ
適切なサイズの肌着を選ぶことで、圧迫感や摩擦による刺激を最小限に抑えることができます。試着して、身体にフィットするサイズを選びましょう。もし縫い目が気になる場合は、ワンサイズ大きめを選ぶのもお勧めです。
6)通気性の良い肌着
通気性が良い肌着を選ぶことで、ムレやかゆみを防ぐことができます。特に、綿やウールなどの天然素材の肌着は通気性が高くおすすめです。やさしい肌触り肌触りが良い肌着を選ぶことで、肌にストレスを与えません。汗が長時間肌に滞留することで雑菌が増えそれが刺激になってかゆみが発生することもあるので、通気性はとても重要です。
7)塗り薬や保湿剤と繊維の相性
塗り薬や保湿剤(軟膏クリーム)などを塗った際に生地が吸収しないことも保湿効果の持続の観点からは重要です。メリノウールはコットンや他の繊維に比べて界面自由エネルギー(SFE)が低く、繊維表面に水や油が貼りつきにくいと言われています。コットンはメリノウールの約10倍貼りつきやすいので、塗り薬や保湿剤との相性も注意が必要です。